睡眠と髪の関係とは?育毛に効く睡眠習慣や抜け毛・薄毛予防の対策
株式会社スヴェンソン所属。毛髪技能士の資格を有する、髪のプロで構成された編集スタッフ。髪コトを通して、皆さまが抱える髪の悩みや不安、疑問を少しでも解決できるよう、分かりやすく情報を届けていくことを心掛けています。
抜け毛・薄毛対策としてできることを探しており、髪と睡眠の関係について理解を深めたい方もいるのではないでしょうか。「睡眠のゴールデンタイム」には俗説もあり、効果のある抜け毛・薄毛対策のためには、睡眠のメカニズムを正しく理解することが大切です。
髪の成長因子の分泌量に関わる睡眠をコントロールするとともに、健やかな頭皮環境の維持を目指しましょう。本記事では、成長ホルモンを分泌する睡眠のメカニズム、睡眠の質を高める習慣や組み合わせたい抜け毛対策について紹介します。
健康な髪の生育に重要な「睡眠」のメカニズム
髪の生育を促進させる成長因子「IGF-1」は、成長ホルモンの働きで分泌量が増加します。成長ホルモンが最も多く分泌されるのは「入眠後3時間」です。この時間帯が「睡眠のゴールデンタイム」となるため、何時に入眠するとしても、熟睡することが重要といえます。
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を繰り返す睡眠周期
一晩の睡眠は、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」からなる約90〜120分のサイクルを3〜5回繰り返します。ノンレム睡眠は主に脳を休息させ、急速眼球運動(Rapid Eye Movement/REM)を伴うレム睡眠は主に体を休息させます。正常な睡眠では入眠直後に深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が見られ、明け方に向けてレム睡眠が長くなり、心身を覚醒させる準備が整います。
【ノンレム睡眠】
- 大脳皮質が冷却され、脳を休める
- 夢を見ることが少ない
- 成長ホルモンの分泌やタンパク質の合成が活発
- 副交感神経が優位で脈拍・血圧・呼吸が安定している
- 熟睡している状態で、この時間帯に起こされると寝覚めが悪い
【レム睡眠】
- 全身の筋肉が弛緩し、エネルギーを節約して体を休める
- 夢を見ることが多い
- 記憶の整理などを行っていると考えられている
- 血圧や脈拍など自律神経機能が変動し、心身ともに覚醒への準備状態にある
成長ホルモンが最も多く分泌されるのは「入眠後3時間」
ノンレム睡眠の中でも特に深い眠りを「徐波睡眠」と呼びます。この段階で成長ホルモンが最も多く分泌されるため、睡眠の最初の3時間が非常に重要です。成長ホルモンは骨や筋肉の修復、成長に寄与する他、髪の成長にも大きな影響を与えます。
成長ホルモンの分泌量は1日の間に特定のリズムで増減しますが、分泌量の制御に強く関与するのが入眠のタイミングです。男性の場合、1日の成長ホルモン分泌量の約6〜7割が睡眠中、睡眠中の分泌量のうち約7割が徐波睡眠中とされます。「何時に入眠するか」ではなく、「入眠後3時間に熟睡する」ことが重要です。
成長因子「IGF-1」が髪の生育を促進させる
成長ホルモンの作用の多くは、IGF-1(インシュリン様成長因子-1)を介して発揮されます。IGF-1は、主に肝臓で生成される成長因子です。成長ホルモンは脳下垂体前葉から分泌され、肝臓に作用してIGF-1の分泌量を増加させます。
IGF-1の主な作用は、細胞の増殖・分化・タンパク質合成などの促進と、細胞死の抑制です。IGF-1は毛母細胞を含むさまざまな細胞に作用し、髪の生育を促進するとともに、ヘアサイクルの乱れを整える作用があると考えられています。
成長ホルモンとIGF-1は生涯を通じて分泌される
成長ホルモンは、特に幼児期から思春期にかけて活発に分泌され、思春期後期にはその分泌量がピークに達します。年齢とともに分泌量は自然と減少しますが、成長ホルモンの役割は幼少時代だけに限られるものではありません。
成人になってからも、成長ホルモンは重要な機能を持ち続けます。たとえ身長の伸びが止まった後でも、成長ホルモンは髪の成長や頭皮の再生、さらには脂肪や糖の代謝、筋肉の維持や増強に寄与しています。
またIGF-1の分泌量も10代がピークです。年齢を重ねると緩やかに分泌量は減少していきますが、成長ホルモンと同様に生涯を通じて分泌されます。
「午後10時から午前2時は睡眠のゴールデンタイム」は俗説
「午後10時から午前2時までの間は成長ホルモンが最も分泌される睡眠のゴールデンタイム」という説もありますが、科学的な根拠はありません。何時に入眠しても、成長ホルモンは入眠直後の深いノンレム睡眠の間に最も多く分泌されます。
メラトニンやコルチゾールのような他のホルモンも睡眠に関連していますが、これらは約24時間の周期(概日リズム)に従って分泌され、入眠時間によって調整されます。特に成長ホルモンは、徐波睡眠が始まるとその分泌が顕著に増加するため、睡眠の質とそのタイミングがホルモンのバランスに大きな影響を与えるといえます。したがって、どの時間に寝るかよりも、睡眠をしっかりと取ることが重要です。
AGAと成長因子(IGF-1)・脱毛因子(TGF-β)の関係
日本人男性の抜け毛・薄毛の原因として最もポピュラーなAGA(男性型脱毛症)は、脱毛因子「TGF-β」によりヘアサイクルの成長期が大幅に短縮され、髪が成長する前に抜け落ちる脱毛症です。
男性ホルモンのテストステロンが毛乳頭の5αリダクターゼ(5α還元酵素)に結び付き、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されると、受容体に結合して脱毛因子TGF-βまたは成長因子IGF-1を産生します。
AGAの進行部位である前頭部・頭頂部ではTGF-βを産生して毛母細胞の増殖を抑制し、ひげや体毛ではIGF-1を産生して毛母細胞の増殖を促進するため、前頭部や頭頂部の髪を薄くしつつひげや体毛を濃くする仕組みです。
育毛視点で睡眠の質を高める6つの習慣
髪の生育に関わる成長ホルモンおよびIGF-1を十分に分泌するためには、特に入眠後3時間の徐波睡眠を意識し、安眠・熟睡できる習慣を取り入れることが重要です。ここでは、夕食・入浴・運動など6つの観点から、育毛視点で睡眠の質を高める習慣を解説します。
成長ホルモンの分泌を意識した夕食の習慣
成長ホルモンは血糖値を維持する重要な役割を持っています。食後に血糖値が上がると、成長ホルモンの分泌が一時的に低下するため、夕食後すぐに寝るのは避けることが望ましいです。また、胃腸が活発な状態では熟睡しにくく、カフェインの覚醒効果も睡眠を妨げることがあります。入眠後の最初の3時間で成長ホルモンがしっかりと分泌されるように、夕食に関して次の点に注意しましょう。
- 夕食は入眠2時間前までに済ませる
- 胃にもたれる食事は入眠の4〜5時間前に済ませる
- 夕食が遅くなる場合は消化のよい軽い食事にとどめる
- コーヒーや紅茶などカフェインを多く含む飲料は、少なくとも入眠3〜4時間前には避ける
深部体温をコントロールする入浴の習慣
入浴で深部体温をコントロールすることもポイントです。深部体温が低いほど眠りやすく、さらに入眠後は皮膚から活発に放熱して体温を下げ、代謝が低下して熱産生も少なくなります。これは脳も体も温度を下げて深い睡眠に入ろうとするためです。
入浴や足湯をすると末梢血管が拡張し、手足の表面からの熱放散が増え、深部体温が低下しやすくなります。ポイントは、入浴で温め過ぎない程度に体温を上げてから、入眠までに深部体温を下げることです。例えば40度程度のぬるま湯で入浴し、90分〜2時間程度かけて深部体温を下げると、リラックスして深い睡眠に入りやすくなるでしょう。
深いノンレム睡眠を得るための運動の習慣
覚醒中の運動量が増加すると、ノンレム睡眠は長くなる(深くなる)とされます。負荷の高い筋力トレーニングは、成長ホルモンの分泌を促すこともポイントです。足腰や心肺機能に不安がある場合、負荷の軽いトレーニングをゆっくり行うのもよいでしょう。
1回の運動では効果が薄いため、習慣的に続けることが大切です。ウォーキングや軽いランニングなどの有酸素運動は持続しやすく、おすすめです。入眠の3時間ほど前にこういった運動をすると脳温が適度に上昇し、入眠しようとする際に脳温の低下量が大きくなるため、深い睡眠を得られやすくなるでしょう。
メラトニンの分泌を妨げない環境光の習慣
メラトニンの分泌を妨げず、深い睡眠に入りやすくすることもポイントです。メラトニンは体内時計や環境光によって調整され、通常は夜の19時ごろから分泌が増え、入眠を促します。
日中は太陽光などの強い光によってメラトニンの分泌が抑制されますが、夜間でも明るい照明があるとメラトニンの分泌が減少し、眠りにつきにくくなることがあります。特にブルーライトはメラトニンの分泌に強く影響するため、就寝前にはスマホやパソコンの使用を避け、暗い部屋で寝ることが大切です。
安眠できる枕・枕カバー選びと手入れの習慣
睡眠の質を高めるために、安眠できる枕・枕カバーを選ぶことも大切です。硬過ぎる枕や柔らか過ぎる枕は寝返りが打ちにくく、高さが合っていない枕は首を圧迫して血行不良や肩こりの原因になることがあります。自分に合わない枕を使うのはやめましょう。
また、枕カバーには寝汗や皮脂、フケが付着しやすく、放置すると雑菌が繁殖し、頭皮に不快感やトラブルを引き起こす可能性があります。枕・枕カバー選びや手入れのポイントは以下の通りです。
- 硬さや高さが合った枕を選ぶ
- 枕カバーはシルクや綿など、通気性や吸湿性に優れたものを選ぶ
- 枕は定期的に干し、枕カバーはこまめに洗濯し、清潔に保つ
生体機能をスムーズに協調させる睡眠リズムの習慣
良質な睡眠や髪の生育には、さまざまな生体機能が協調的に作用します。慢性的な睡眠不足は心身のパフォーマンスを低下させ、髪や頭皮にも悪影響を与えかねません。以下のような点を意識して、良質な睡眠習慣を身に付けましょう。
- レム睡眠は約90分周期で訪れるため、6時間または7時間半の睡眠を取る
- 入眠を促すメラトニンの分泌量が多くなる夜間に入眠する
- メラトニンの分泌量が低下し、覚醒を促すコルチゾールの分泌量が多くなる朝方に起床する
- 起床時に朝日を浴び、睡眠・覚醒のリズムを調整する
抜け毛の原因がAGAなら専門クリニックの受診が必須
一時的な抜け毛であれば、成長ホルモンやIGF-1の分泌を促す習慣を取り入れれば、改善が期待できる場合もあります。しかしAGAは進行性の脱毛症であるため、睡眠習慣などを見直しても、自然治癒は期待できません。
AGAの特徴は、生え際の後退やつむじ周辺の薄毛が徐々に進行することです。これらの部位で髪の成長期が大幅に短縮されているため、側頭部や後頭部に比べて細く短い毛が目立つ場合は、AGAを発症しているかもしれません。
思春期以降の男性なら誰にでも起こり得る脱毛症ですが、状態によって適切な治療方法は異なります。AGAの兆候が疑われるなら、早めに専門クリニックを受診しましょう。
睡眠習慣と組み合わせたい抜け毛予防の対策
髪の生育にとって安眠・熟睡できる睡眠習慣は重要ですが、他にも組み合わせたい抜け毛予防の対策があります。例えば、髪の合成や頭皮環境を意識した食生活、髪に悪影響を及ぼさない健康的なストレス発散です。健やかな頭皮環境を維持するシャンプー選びと洗髪習慣にも目を向けましょう。
髪の合成や頭皮環境を意識した食生活
髪の主成分はタンパク質の一種であるケラチンです。成長ホルモンの働きなどで産生されるIGF-1は毛母細胞の増殖を促しますが、ケラチン合成に必要な栄養素が十分に供給されなければ、強く太い髪は作られません。特に重要な栄養素は以下3点です。
- タンパク質(アミノ酸):体内で分解され、ケラチンに再合成される材料となる
- 亜鉛:ケラチン合成に必須のミネラル
- ビタミンC・B6・B2:亜鉛の吸収や働きを助け、ケラチン合成を促進させる
タンパク質・ミネラル・ビタミン群は、髪の土壌となる頭皮環境や毛母細胞に栄養を届ける血行の改善にも作用するため、日々の食事からバランスよく摂取しましょう。
髪に悪影響を及ぼさない健康的なストレス発散
なるべく精神的ストレスをため込まないようにすることもポイントです。強いストレスを受けると、自律神経のバランスを乱して血行不良を招き、髪・頭皮への栄養供給を阻害される恐れがあります。またストレスは脳を興奮状態にさせるため、深い睡眠および成長ホルモンの分泌を得られにくくなることもあり得るでしょう。
ストレス発散は重要ですが、暴飲暴食や喫煙は血行不良や睡眠の質の低下を招きやすく、髪の生育に悪影響を与えます。適度な有酸素運動など、健康的なストレス発散方法を取り入れましょう。
健やかな頭皮環境を維持するシャンプー選びと洗髪習慣
頭皮環境を健やかに保つ洗髪習慣も大切です。お湯で予洗いをしてから低刺激なシャンプーを手で泡立て、指の腹でマッサージするように優しく洗ったら、泡・汚れを残さないようにしっかりと洗い流しましょう。
髪がぬれた状態で放置すると枝毛・切れ毛などのダメージを招きやすく、常在菌の異常繁殖によるかゆみ・フケ・臭いなどを引き起こす恐れもあります。洗髪後は髪の根元から完全に乾かしましょう。
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まとめ
自身の髪に触れながら微笑むリラックスした雰囲気の男性
髪の生育にとって重要なIGF-1の分泌量を増加させる成長ホルモンは、睡眠を取る時間帯にかかわらず、入眠後3時間に最もよく分泌されます。良質な睡眠を意識した夕食・入浴・運動など、熟睡できる習慣を取り入れましょう。髪の土壌となる頭皮環境を健やかに保つには、ヘアケア習慣の改善も重要です。
薄毛専門理・美容室スヴェンソンなら、デザインカットと頭皮ケアや頭皮クレンジングをセットにして、プロによるクイック&リーズナブルな施術を受けられます。プライベート空間にて、ご自宅で継続できるヘアケア方法の案内を受けられることもポイントです。抜け毛の予防をお考えなら、まずはお気軽に相談してみてはいかがでしょうか。