抜け毛は正しい原因を把握して対処することが大切

株式会社スヴェンソン所属。毛髪技能士の資格を有する、髪のプロで構成された編集スタッフ。髪コトを通して、皆さまが抱える髪の悩みや不安、疑問を少しでも解決できるよう、分かりやすく情報を届けていくことを心掛けています。

抜けた髪の毛を手に持つ

抜け毛の原因には、さまざまなものがあります。男性に多いのがAGA(男性型脱毛症)が原因であるケースです。しかし、場合によってはシャンプーが合っていないといった、外的要因があるケースも存在します。抜け毛が多いのはどの部分か確認し、最適な対策を採りましょう。

AGA(男性型脱毛症)による抜け毛

男性の場合、抜け毛の原因でもっとも多いのがAGA(男性型脱毛症)です。髪の毛には、「成長期」「退行期」「休止期」というサイクルがあります。全体の90%を占めているのが成長期の髪の毛です。

髪の毛の成長サイクル、成長期、退行期、休止期

AGA(男性型脱毛症)になると、ヘアサイクルが乱れ、成長期が大幅に短縮されてしまいます。通常の髪の毛の成長期は2~6年ありますが、AGA(男性型脱毛症)の方の場合、髪の毛は半年~1年で退行期に移ってしまいます。そのため、全体的に髪の量が薄くなってしまうのです。通常なら成長期であるはずの毛が抜けるため、抜け毛の量も増えます。この場合、成長途中の毛が抜けるため、通常より細く短い毛が多くなるのが特徴です。

AGA(男性型脱毛症)には、男性ホルモン「テストステロン」が大きくかかわっています。テストステロンは、「5aリダクターゼ」という酵素と結合することで、「ジヒドロテストステロン」に変化します。ジヒドロテストステロンは髪の成長を阻害して毛周期を乱す働きがあるホルモンです。ジヒドロテストステロンが毛乳頭に存在するレセプターと結びつくと、脱毛を促す「TGF-β」が増加し、毛の抜けるスピードがはやまります。このようなメカニズムでAGA(男性型脱毛症)は進行します。

髪の毛と頭皮の断面図、毛幹、皮脂腺、毛根、毛母細胞、毛乳頭、立毛筋、テストステロン、ジヒドロテストステロン、休止期

AGA(男性型脱毛症)の特徴は、生え際やつむじから薄毛が進行することです。生え際の両サイドからM字型に毛が薄くなるタイプ、つむじからO型に進行するタイプ、生え際の中心からU字型に後退するタイプに大きく分かれます。側頭部や後頭部はあまり薄くなりません。生え際やつむじから薄毛が進行している場合は、AGA(男性型脱毛症)を疑いましょう。

AGA(男性型脱毛症)による抜け毛の対処法

AGA(男性型脱毛症)になった場合は、どうやって対処すれば良いのでしょうか? AGA(男性型脱毛症)の発症しやすさは、遺伝によって決まります。遺伝的に5aリダクターゼが活性化しやすい体質の方や、脱毛因子生成に関わるジヒドロテストステロンの受容体である男性ホルモンレセプターの感受性が高い方は、将来AGA(男性型脱毛症)になる可能性が高くなります。薄毛になりやすい体質かどうかは、生まれつきある程度決まっていますが、はやめに対策をすることでAGA(男性型脱毛症)になるリスクを軽減することも可能です。AGA(男性型脱毛症)を防ぐためには、以下の方法がおすすめです。

● 頭髪の成長に必要な栄養素を食事で取る

栄養のある様々な食材

普段から食事で髪の毛に必要な栄養素を補給しておけば、AGA(男性型脱毛症)の予防につながります。AGA(男性型脱毛症)を防ぐには、亜鉛やビタミンB群、カプサイシンといった栄養素がおすすめです。

亜鉛には、髪の毛の主成分であるケラチンを合成する働きや、AGA(男性型脱毛症)の原因となる5aリダクターゼを抑制する働き、細胞の再生を進める働きがあります。亜鉛は牡蠣・豚レバー・煮干し・牛肉・うに・たらこといった食材に多く含まれているため、積極的に食べるようにしましょう。ただし、亜鉛の過剰摂取は「亜鉛過剰症」を引き起こす可能性があります。『日本人の食事摂取基準(2015年版)』にでは、亜鉛の1 日あたりの摂取上限量を以下のように定めています。

  • 18~29歳:40mg
  • 30~69歳:45mg
  • 70歳以上:40mg以内

近年はサプリメントなどで亜鉛を補給できますが、上記の量を超えないよう注意してください。

ビタミンB2やビタミンB6といったビタミンB群もおすすめです。ビタミンB2には皮脂の過剰分泌を防ぐ働きがあります。豚レバーや牛レバー、海苔、唐辛子といった食材から摂取できます。1日の推奨摂取量は成人男性が1.6mg、成人女性が1.2mgです。

<参考例>
・豚レバー(40g):1.44mg
・牛レバー(30g):1.50mg

ビタミンB6はタンパク質ケラチンを合成するのに使われます。1日の推奨摂取量は成人男性が1.4mg、成人女性が1.2mgです。唐辛子・ピスタチオ・にんにく・まぐろ・海苔・しいたけに豊富に含まれるため、多く食べるようにしましょう。

<参考例>
・にんにく(100g):1.50g
まぐろ/赤身(160g):1.36g

唐辛子に含まれているカプサイシンという栄養素も髪を健康にしてくれます。カプサイシンは、IGF-1を産生させるCGRPを増加させる働きを持っています。IGF-1とは、髪の正常なサイクルを維持するのに欠かせない成分です。イソフラボンと一緒に摂取すると、より健康効果が高まります。唐辛子や大豆製品を多めに食べるようにしましょう。

● 育毛剤を使う

育毛剤を使用する男性

育毛剤を使う方法もあります。AGA(男性型脱毛症)には、5aリダクターゼの働きを抑えてジヒドロテストステロンの生成を防ぐ成分や、脱毛を引き起こすFGF-5を抑制する成分の入った育毛剤が効果的です。

5aリダクターゼを阻害する成分には、オウゴンエキス・ヒオウギエキス・ホウセンカエキス・ビワ葉エキスといったものがあります。中でも、オウゴンエキスとヒオウギエキスは5aリダクターゼを阻害する働きが強く、おすすめです。

FGF-5を抑制するには、M-034エキスの含まれている育毛剤がおすすめです。M-034エキスには、ジヒドロテストステロンが生成された後に脱毛を促すのを、防ぐ働きがあります。

育毛剤を選ぶ際は、ぜひオウゴンエキスやヒオウギエキス、M-034エキスが含まれているか確認してみてください。

<対象成分配合育毛材の事例>

・チャッチアップ

・イクオス

・BUBKA

● AGA(男性型脱毛症)治療を受ける

すでに髪が薄くなっている場合は、病院で治療を受けてみても良いかもしれません。クリニックに行けば、AGA(男性型脱毛症)を改善するのに効果的な薬を処方してくれます。内服薬のみで治療をするケースもあれば、外用薬を使う場合もあります。ただし、現在AGA(男性型脱毛症)にもっとも効果があるのは内服薬だと考えられているため、飲み薬のみで治療するのが一般的です。また、注射器を使って頭皮に成長因子を注入する方法もあります。

治療を受けたい場合は、専門のクリニックか皮膚科へ行きましょう。可能であれば、専門のクリニックで治療を受けたほうが、さまざまな治療法を選択できます。

AGA(男性型脱毛症)の治療薬を個人輸入している方もいらっしゃいますが、避けたほうが無難です。個人輸入は価格が安い代わりに、生産国がバラバラだったり、配合成分が正確に分からなかったりと、健康リスクが高くなります。治療の際は必ず医療機関を受診しましょう。

間違ったヘアケアによる抜け毛

シャンプーが並んでいる店内

AGA(男性型脱毛症)は、体内で起こる症状(内面的要因)以外に、間違ったヘアケア(外的要因)によって抜け毛が増えるケースが多くあります。たとえば、刺激の強い界面活性剤入りのシャンプーを使ったヘアケアです。

ほとんどのシャンプーには、界面活性剤が配合されています。界面活性剤には、「洗浄作用」「湿潤作用」「乳化作用」「浸透作用」「気泡作用」「分散作用」といった働きがあります。配合することで強い洗浄力を得られますが、刺激が強過ぎて悪影響を与えるケースもあるのです。

刺激の強い界面活性剤入りのシャンプーで髪を洗うと、皮脂や汚れがよく落ちます。しかし、頭皮にはある程度の皮脂が必要で、落とし過ぎると乾燥したり、過剰反応によってベタついたりしてしまいます。頭皮環境が悪くなると、髪は健康に生えてきません。

また、アレルギー反応が出る可能性もあります。肌が弱い方は特に注意が必要です。アレルギー性皮膚炎を発症すると、髪の成長も阻害されてしまいます。もしも新しいシャンプーを使い始めて抜け毛が増えたら、成分を確認してみてください。

なお、次の項からは、薄毛で悩む方も使用できる界面活性剤入りシャンプーについて解説します。

ヘアケアによる抜け毛を引き起こさないためには

界面活性剤が髪の毛に悪影響を及ぼすケースもありますが、すべての界面活性剤が危険なわけではありません。界面活性剤には水と油を混ぜる働きがあり、ほとんどが皮脂汚れである頭皮を洗うのに欠かせないものです。

シャンプーを購入する際は、成分を確認して、刺激の少ない界面活性剤が入っているものを選びましょう。ラウリン酸Naやオレイン酸Na、ステアリン酸Naといった石けん系界面活性剤がおすすめです。また、ラウリン酸スクロースやミリスチン酸スクロースといった脂肪酸エステル系界面活性剤も、頭皮に強い刺激を与えません。

石けん系界面活性剤シャンプー 脂肪酸エステル系界面活性剤シャンプー
・ZACCスカルプシャンプー
・アミノ酸せっけんシャンプー
・ディアテック カウンセリングプレシャンプー
・Ke-Grow
・ハツモール 薬用スカルプシャンプーEX
・薬用デオナースシャンプー

反対に髪に悪影響を与える可能性が高いのは、ラウリル硫酸入りのシャンプーです。ラウリル硫酸は非常に洗浄力が強く、肌への刺激も強いため、頭皮を荒れさせるおそれがあります。表示をみて、ラウリル硫酸Na・ラウレス硫酸Na・ラウレス硫酸アンモニウム・ラウリル硫酸塩といった成分が入っていたら、薄毛対策やヘアケアには向いていないので購入するのは控えましょう。

まとめ

抜け毛対策をするには、原因を把握して適切なケアをする必要があります。生え際やつむじを中心に髪が薄くなっている場合は、AGA(男性型脱毛症)を疑いましょう。全体的に薄毛が多い場合は、間違ったヘアケアのような外的な要因がある可能性が高くなります。原因を見極めて、効果的な対策を採りましょう。

参考URL

https://www.hairmedical.com/nukege/volume/
https://lab.chapup.jp/cat2/basic/cause-remedy-117
https://www.hairmedical.com/nukege/cause/
https://ikumou-net.info/aga/
https://josei-bigaku.jp/kaimenkasseizai3872/

 

公開日:2019/02/28

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